今回は、スリランカはコロンボ証券取引所に上場する不動産ディベロッパ、「Colombo Land and Development Company PLC社」(以下、CLND社)のCOOを務めるDavadharshan Jayadeva氏を訪問し、お話を聞いてきました。
■Davadharshan Jayadeva氏について
彼は、英国公認会計士及び英国公認管理会計士の資格を保有しており、イギリス国内でMBAを取得しています。MBA取得後は、社会主義国であったスリランカにおいて国内初の民間会社であるIndian Oil Corporation社を起業し、CFOに就任しました。その後、アーンストヤングとKPMGの2つのファームで3年程度コンサルティイング業務(主に企業デューデリ)に従事し、現在のCLND社COOに就任しました。
■同社の成り立ち
この会社の成り立ちは非常に面白く、スリランカが内戦状態にあった1990年代後半にシンガポールからやって来たディベロッパに起源をもちます。その頃のスリランカには、まだプライベートファンドなどが存在しなかったため、CLND社の本社となっている建物などを含め、そのシンガポール人たちが直接、不動産開発をしにやって来たそうです。
そして、当時のスリランカでは考えられないような大きな資本を投資してくれた彼らに対して、当時のスリランカ政府は感謝の証として、コロンボ駅周辺の13haの土地を中心に、99年の定期借地契約(lease hold)を締結しました。
内戦が終わった後、国家の威信をかけて実質的な首都であるコロンボのメインステーション、コロンボ駅を中心とした地域を再開発する必要が生まれました。そのため、シンガポール企業が保有する定期借地権をCLND社に移転してもらい、今ではスリランカ政府が7割にのぼる株式を保有しています。そこで、今の大規模開発が進められることになりました。いずれにせよ、同社が公社的性質を帯びる民間企業であるのは間違いないでしょう。ちなみに、日本国総領事であるカランナゴダ氏も同社の取締役を務めているとのことです。新興国では、どの事業者と組むかが非常に重要となりますが、このように歴史があり、政府とコネクションのあるディベロッパは貴重といえるでしょう。
■同社の現在の取り組み
今、コロンボ駅周辺は、まさにカオスを感じさせる商業地域のペタ地区が取り巻いています。しかし、既にその一部分は更地となっており、大規模商業施設や高級コンドミニアムの建設が来年から始まろうとしています。最大3ベッドルームを備えた大規模コンドミニアムには、プールやフィットネスジム、ウォーターフロントにカフェなどを併設していて、他国では標準的ではあるものの、スリランカではまだない物件の開発を予定しているそうです。この物件はコロンボ駅の本当に近くであり、コロンボ市内におけるランドマーク的存在になるだろうとのことでした。開発規模が大きいため、日本の投資家にぜひ協力してほしいとの要請を受けました。また、同氏いはく、まだゼネコンが全て決まっているわけではないので、良いところがあれば是非紹介してほしいとのこと。 特に高い技術を持つ日本のゼネコンは予算の関係はあるものの、大歓迎だとの話です。ホテル事業に関しては、シャングリラグループとの提携が決定しています。
■同社の強みと弱み
CLND社の強みは、不動産業そのものが成長産業であり、巨大な需要が背景にある、ということです。来年2013年初めから、高速道路から港湾から含めたあらゆるインフラに関して建設が本格化する予定だということです。また、同社は政府とのつながりが強い点も挙げられます。通常は半年もしくはそれ以上かかる許認可事項も数週間でおろすことができるということです。
弱みは、どの会社でも当てはまることですが、土地価格の上下幅が大きく、投資のタイミングが難しい点です。
<コロンボ駅周辺 再開発にかかるペタ地区>
■グローバルな取り組みについて
COOご自身がシンガポールのディベロッパに在籍していたため、相当程度グローバルな視点とネットワークをもっています。ただ、華僑系が中心になっており、できれば日本とのパイプを広げることができればよいとのことでした。先にも述べたとおり、ノウハウの蓄積が浅いため、海外との技術提携を積極的に推進しようとされています。
■データ
・売上及び利益の推移(1期は1月乃至12月) 単位:LKR(スリランカルピー)
2009年度 | 2010年度 | 2011年度 | |
売上 | 904,000,000 | 889,000,000 | 542,000,000 |
税引後利益 | -23,000,000 | 4,854,000,000 | 96,000,000 |
※100円≒162LKR(平成24年5月20日現在)
・国内第2位の土地ホルダ(1位はジョンキールス社)